内縁の夫婦

 私たち夫婦は一〇年間生活してきましたが、ある事情から、婚姻届を出していないため、一般に「内縁の夫婦」と呼ばれている関係にあります。
 ところが最近、夫から別れ話が持ち出され、私もこれについては合意する意思でおりますが、慰謝料などの財産問題について折り合いがつかず、ほとほと困り果てています。内縁関係にある者の保護にはどのような法的配慮がなされているののでしょうか。

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 内縁とは、婚姻意思をもって夫婦としての共同生活を行い、社会的には夫婦と認められているにもかかわらず、法の定める婚姻の届出手続きを終了していないために、法律的には正式の夫婦とは認められない、事実上の夫婦関係をいいます。
 内縁はこのように婚姻の意思があることが必要ですので、婚姻意思を欠く「妾関係」や単なる「私通関係」と異なり、また夫婦共同生活の実体を有する点で「婚約関係」とも異なります。
 内縁が問題とされるのは、民法(旧民法もそうですが)が法律婚主義を採用しているからにほかなりません。すなわち、民法は届出によって婚姻が成立するとしているところから(民法七三九条一項)、婚姻の意思をもって結婚式などの儀式をしても、届出を欠く場合には正式の夫婦として法律の保護を受けられないということになります。
 旧民法においては、男女双方が戸主である場合には入籍が不可能でしたし(旧民法七四四条)、両親や戸主が同意しない結婚も認められていませんでした(旧民法七七二条、同七五〇条)。このため、入籍していない夫婦、つまり家族制度から生ずる内縁が相当程度みられました。そのため、これらの内縁関係にある者を保護する必要が生じ、一方では不当に内縁を破棄された者の救済の問題として、また他方では工場・鉱山労働者の労働災害による遺族補償の問題として、判例や学説において内縁について多く論じられ、あるいは立法化されるようになってきたのです。
 内縁については、その考え方にいくつか意見の対立がありますが、婚姻意思の存在、夫婦の共同生活の存在を二つの核として、個々のケースに応じて婚姻に関する規定(例えば婚姻費用の分担、財産分与など)を準用していこうとする傾向にあるようです。そして、内縁は婚姻に準ずるものと考えられていますから、すでに述べた婚姻に関する規定がほとんど準用されることになります。しかし、配偶者としての相続権、婚姻による成年擬制・同氏の適用はなく、また内縁夫婦の間に生まれた子どもは非嫡出子(昔は私生児といいましたが、最近はこのように呼びます)となり、母の籍に入り、母が親権者となります。
 内縁は婚姻に準ずるものですから、内縁を不当に破棄してこれを解消した者は、当然相手に対し損害賠償義務を負います。
 内縁の解消事由については、離婚原因(民法七七〇条)を準用しようという考えが一般的といえます。しかし内縁は、法的に保護された夫婦と異なりますので、婚姻届出をするように強制することはできず、内縁の不当破棄者に対しては損害賠償責任を追及できるにとどまります。内縁は、このように法的には不十分な保護しか与えられていないことを十分に認識しておく必要があるといえます。
 重婚的内縁とは、通常は、婚姻の届出をした夫婦関係が破綻してしまい、一方の配偶者(夫)が、他方配偶者(妾)以外の異性(女)との間で内縁関係を継続しているものをいいます。民法は重婚を禁止して一夫一婦制を守ろうとしていますので(民法七三二条)、重婚的内縁は無効であり、保護に値しないという考え方が有力です。
 しかし、婚姻届のある夫婦がまったく破綻してしまっており、他方で実質的な夫婦ともいえる内縁が成立している場合には、この内縁関係を保護しようという考え方が多くなってきているのも見逃せない現実です。このように、法律上の配偶者を保護すべきか、内縁配偶者を保護すべきかは難しい問題といえます。

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